何故、そのことについては何でも知っているはずのプロに見えないのか?
1996年7月6日、当時深夜のコンビニでアルバイトをしながら税理士試験の勉強をしていた私は、あるコンビニ本部に向かっていました。そのコンビニ本部の経営企画室の人とお会いして話をするためです。そのコンビニ本部は私が働いていたコンビニとは違うチェーン店になります。
「何でただの1アルバイトが本部の経営企画室の人と話を?」
「何で自分が働いていたコンビニとは違うチェーンの人と話を?」
皆さんにとってはいろいろクエスチョンマークが付く話だとは思いますが今ここで細かいことを説明し出すと時間がかかってしまうので私に関する説明は一番最後にします。
ここではその人の名前をAさんとします。Aさんからはいろいろ貴重な話を伺いしましたが、話の最後に私はある質問をしました。
私:「セブンイレブンの売り上げは何故あんなに高いのか?」
上記は当時の各コンビニの1店舗あたりの1日の平均売上高(日販)のグラフになります。
現在はファミリーマートに吸収されたサークルKやサンクスなどもあります。ローソンも今のローソンとは経営母体が異なっており、当時の親会社はダイエーでした。ちなみに私がアルバイトをしていたのはセブンイレブンではありません。このグラフを見れば分かるとおもいますがセブンの売上があたま1つ抜けています。コンビニなんてどこも同じくらいの店舗面積で、置いてある商品もどこも同じようなものなのに何でセブンだけが他のチェーン店より20万円も売上が高いのか? Aさんに対する質問はそのような疑問があったからでした。ちなみにセブンの売上があたま1つ抜けているという構造は今も変わっていません。
さて、私の質問に対してAさんの答えはとても興味深いものでした。
Aさん:「全体としては見えないのだ。だが、1つ1つについて、詳しく調べてみるとどうやらほんのちょっとした差であるようだ。他のコンビニよりもセブンさんの方が0.1ポイント上だとか。例えば、商品の欠品について、他のコンビニは、他のビールはあるけどアサヒのスーパードライは品切れさせているが、セブンさんは他のビールは品切れしてても、アサヒのスーパードライだけはあるとか。掃除にしても、お客様の中にはゴミ1つ落ちていてもいやだ、という人がいるかもしれない。そういうとき、セブンさんには塵1つ落ちていないとか。アルバイトの使い方なんかにしてみてもセブンさんの方が上手いのかもしれない。そういった、ほんのちょっとした差があるようだ。そういった0.1ポイントの差が100項目くらい集まってあれだけの差になっているようだ」
皆さんはこの話を聞いてどのように思われたでしょうか? 当時の私はこの話を聞いたときにとても不思議で神秘的なものを感じてしまいました。そして深く感心してしまったのです。この話の核心である0.1ポイントの差が100項目くらい集まってというところをとって、私はこの話を「0.1×100」と呼ぶことにしました。
しかし、時が経つにつれ私はAさんの話に疑問を持つようになりました。
あの日、Aさんは私に社会勉強の意味でいろいろなことを教えてくれました。
Aさん:「私が何十万回バットを振っても落合選手にはなれない。私が何十万回ラケットを振っても伊達選手にはなれない。365日その事を考えている人と、そうでない人との間では当然差がつく。そのことについては何でも知っている、そのことについては任せられる、それがプロフェッショナルというものだ。」
ここで単純な疑問が生じたのです。そのことについては何でも知っているはずのプロがセブンの売り上げが高い理由について何故見えないのか?
そこで私はこのように考えました。何でも知っているはずのプロに見えないのは彼らがプロだからだと逆説的に考えたのです。そして、当時の私はプロには考えもつかないようなとんでもない結論を導き出してしまったのですが、ここではその結論を説明するよりも前にまずは0.1×100とは何なのかという話をしたいと思います。
0.1×100の話を聞いた時に皆さんはどのようなイメージを持たれたでしょうか? 私がイメージしたのは「塵も積もれば山となる」ということわざでした。小さなことを1つ1つ積み上げて最後に大きなものになる、そういうイメージです。
経営においては、コスト削減がイメージしやすいと思います。電気をこまめに消すとかエアコンの設定温度を必要最低限に抑えるとか、より料金の安い業者に切り替えるとか、会社の規模が大きければ大きいほど、1つ1つのコスト削減額は小さくても総額での効果は大きくなります。
でもここでは、コスト削減の視点ではなく、不特定多数の消費者を相手に商売しているビジネスに関係がある事例を見たいと思います。今の時代、我々消費者にとってなじみあるアマゾンや食べログ、価格コムなど星の数で商品やサービスが評価されるサイトが分かりやすいです。
上記は価格コムに掲載されていたある商品に対する評価ですが、全ての項目で星の数を満点に近づけるのが0.1×100のイメージです。Aさんの話ではこうした評価項目が100項目くらいある中で、セブンが全項目について他のコンビニよりほんの少し点数が高いということでした。各項目の星の数が多い商品は消費者の満足度が高くなりますが、それではそうした商品が一番売れているかというとそれは違います。
上記の通り満足度ランキングと売れ筋ランキングで順位は一致しません。何故だか分かりますか? その理由は価格です。満足度の高い商品は総じて価格が高いです。大抵は予算の上限を超えてしまうので、自分にとって本当に必要なものは何か、取捨選択をする必要があります。価格コムを見ているとコスパのよい商品が売れ筋ランキングの上位に来ていることが多いように感じます。そう考えるとセブンの高い日販は本当に0.1×100という戦略によるものなのか疑問が生じてきました。
コスパという視点で考えると、塵1つ落ちていても嫌だというごく少数の神経質な消費者のために、より丁寧な掃除をするメリットはいったい何なのでしょうか。 100近い項目の全てに手間暇かけて星の数を上げるとなると、それにかかる全体のコストは一体どれくらいになるのでしょうか。
100項目全てに対応しなくても大多数の消費者が重視している項目のみピックアップして、その部分だけを重点的に対応した方が費用対効果が高いはずです。消費者はどのようなことに、お店に対する満足や不満を感じているのでしょうか。
「お客様の声のうち「良い評価」に属するものは「おいしかった」「親切だった」「きびきびしていた」「笑顔が良かった」「礼儀正しかった」「店内が清潔だった」「メニューが豊富でうれしかった」などといった内容が多く、「悪い評価」に比べるとわりと幅が狭い。
― (中略) ―
「悪い評価」のほうは内容は非常に多岐にわたっていて、その一つ一つがはっきりしている場合が多いので、すぐに対策を講じられる点でとても役に立つ」
CoCo壱番屋 答えはすべてお客様の声にあり 宗次徳二 日本経済新聞社
良い評価は幅が狭く、悪い評価は内容が多岐にわたっている。これ、アンナ・カレーニナです。
最初のページにおける私の疑問、良い経営の原因はどこも似通っているが、悪い経営の原因は多岐にわたっているという以外のパターンは存在するのか、ですがこれは今、自分がしていることを考えれば分かることでした。
Q. どうすれば多くの人に見てもらえるウェブサイトを作ることができるのかを教えて下さい。
Gemini回答 2024/4/6
多くの人に見てもらえるウェブサイトを作るには、以下のポイントを意識する必要があります。
- ターゲットユーザーを明確にする 誰に見てもらいたいかを明確にすることで、そのユーザーにとって価値のあるコンテンツやデザインを作ることができます。
- SEO対策を行う 検索エンジンで上位に表示されることで、多くの人に見てもらえる可能性が高くなります。
- 良質なコンテンツを作成する ユーザーにとって役立つ、面白い、と思ってもらえるようなコンテンツを作成しましょう。
- ソーシャルメディアを活用する SNSで情報を発信することで、多くの人に知ってもらうことができます。
- 広告を利用する リスティング広告やSNS広告などを利用することで、ターゲットユーザーに効率的にアプローチできます。
- デザインにこだわる 見やすく、魅力的なデザインにすることで、ユーザーの滞在時間を延ばすことができます。
- モバイル対応する 近年はスマートフォンからのアクセスが主流なので、必ずモバイル対応しましょう。
- 分析ツールを活用する アクセス解析ツールなどを活用することで、ユーザーの行動を分析し、改善に役立てることができます。
多くの人に見てもらえるウェブサイトを作るには、時間と労力が必要です。しかし、上記のポイントを意識することで、より多くの人に知ってもらうことができるでしょう。
Chat GPTやコパイロットにも聞いてみましたが、どれも似通ったアドバイスでした。「上記のポイントを意識する」というGeminiの回答からも分かるように成功に至る道というのはだいたい共通項があり、聞けば当たり前だと思うことが多いです。この当たり前と思うことができない原因は人それぞれによって違うということなのでしょう。というわけでそれ以外のパターンというのは存在しないというのが私の結論ですが、当たり前のことを当たり前に行うのって結構難しいとあらためて思いました。私の質問に対するGeminiの回答の中では3番が一番重要だと思いますが、ここが達成できないと他の部分を行う意味がないです。
それでは、良い評価は幅が狭く悪い評価は多岐にわたる理由は何でしょうか? それは人間の負の感情が強く影響しているからです。
通常の場合、レビューを書く気力をふるい起こすのは不満を感じた顧客であることが多く、全般的には顧客が満足しているにもかかわらず、歪曲したレビューだけが掲載されてしまうことがよくあるのだ。
勝手に選別される世界 マイケル・ファーティック、デビッド・トンプソン ダイヤモンド社
「あのお店、いまいちだったよ」といった悪い評判は広がりやすいという調査結果があります。「あのお店、すごくよかったよ」という良い口コミは平均5人に話すのに比べ、「あの店、ひどかったよ」という悪い口コミはなんと平均10人に話すそうです。今はSNSを通じ簡単に口コミが広がります。おそらく、その影響は10人ではすまないですよね。グルメサイトに低い評価を書き込まれたら、それこそたくさんの人が閲覧するはずで、そうなると挽回するのはどんどん難しくなっていくでしょう。
すごい立地戦略 街は、ビジネスヒントの宝庫だった 榎本篤史 PHP研究所
こうした感情は皆さん共感できるのではないでしょうか。お店で良い接客を受けることはあるがそれをわざわざネットに書き込むことはしない、しかし、お金を払っているのに失礼な接客をされたら黙っていられないという人がほとんどではないでしょうか。
「不満足の原因が「衛生要因」と呼ばれる所以は、トイレが汚いと嫌だけれど、清潔な状態だとなんとも思わない、というのと似ていることである」
残念な人の思考法 山崎将志 日本経済新聞社
上記を見る限り、良い評価を得るためのハードルは高く、その一方、悪い評価に対する消費者の閾値(ハードル)は低いので数が増えやすく、その結果、悪いイメージが実際よりも増幅されてしまうのが実態という気がします。これは人間の根源的な性質に由来するものでしょう。
このように良い評価と悪い評価については、人間の普遍的な価値観と負の感情という両面が影響していると思うのですが、それに関連して大きな問題が存在することに気が付きました。そしてそれが原因で私は長い間、誤った考えに捕らわれ続けました。